長編
□血色旅禍奇譚
2ページ/3ページ
序章
カゲロウデイズ攻略後。
漸く平穏な日常を送れると思っていた矢先にそれは起こった。
キド「任務だ。
今回は皆で向かうぞ」
相変わらずアジトに集まっては騒いでいるメカクシ団。
そんな彼らに団長であるキドが高らかにそう宣言した。
その言葉に携帯を弄っていたシンタローが顔を上げる。
シン「任務?
皆で行くような内容なのか?」
キド「いや、任務自体は探し物を見つけてほしいという内容だ。
ただ場所がな・・・・」
全員「「「「「「「「「「??」」」」」」」」」」
言い澱むキドに誰もが首を傾げた。
****
「・・・・なるほどね」
鞠亜は目的地に着いた途端キドが言い澱んだ理由が分かった。
自身が遠い目をしているのを自覚しながらもその建物を見上げる。
そこに聳え立つのはいかにもな雰囲気な廃病院だった。
「とりあえず・・・・。
シンタロー、大丈夫だから。
落ち着け、な?」
シン「(ガクブルガクブル)」
ガタガタと体を震わせながら鞠亜の背中に縋り付くシンタロー。
その顔は既に恐怖で涙目だった。
アヤ「シンタロー可愛いっっ!!!」
シン「うぅ・・・アヤノォ・・・」
「お前もブレないよなアヤノ。
モモ、マリー、ヒヨリは無言で連写しない!!」
マリ「シンタロー受け!ktkr!!」
「マリー・・・、人の話を聞いてくれ。な?」
カシャカシャと視界の端で未だに連写されている音に鞠亜は頭を抱えた。
キドに助けを求めたくても彼女も恐怖のあまりそれどころではない。
カノとセトがそんな彼女を励ましている所だ。
貴音「ていうか、いつまでここにいるの?」
ヒビ「この分じゃ当分無理そうだね」
遥「あ〜・・・、うちの後輩たちはやっぱり天使だねぇ」
貴音「その3人の内2人の顔が死んでるけどね」
待ち惚けを食らいながらも鞠亜を助ける気のない貴音達。
いらない被害は御免被りたいらしい。
結局、その廃病院に入ったのはそれから1時間後の事だった。
「それで、探し物って一体何なんだ?」
キド「あ、あぁ・・・。
以前ここに入院した時に置き忘れた懐中時計だそうだ。
時計には桜の絵が彫られているらしい」
セト「じゃあ病室を中心に探してみるッス」
廃病院の中を複数の懐中電灯で照らしながら歩く。
中はかなり荒れており廊下にはガラスが散乱しており足の踏み場もない。
歩く度にパキッと音をさせながら先に進む。
因みにシンタローは両サイドに鞠亜とアヤノをスタンバイさせている。
こうでもしないとシンタローはマジで倒れてしまうかもしれない。
主に恐怖によるストレスで。
ガチャっ
「・・・・ココにもなかったな」
いくつかの病室を見て回ったが目的の物は見つからない。
本当なら分散して探すべきなのだが一部の者がそれを許さない。
なのでこうして皆で見て回り懐中時計を探していた。
そして、次の病室の開けた瞬間。
ビュゥオッッ
「!!」
キド・シン・マリ「「「ヒィッ!!!」」」
突然の突風に悲鳴を上げるシンタロー、キド、マリー。
先頭に立っていた鞠亜は腕で顔を庇い風をやり過ごす。
そしてそっと室内を見渡すと窓辺に光るものを見つけた。
「あれは・・・?」
ゾロゾロと窓辺に近づくとそこには古びた懐中時計が置かれていた。
時計にはしっかりと桜が彫られており依頼品で間違いないようだ。
セト「見つかって良かったスね」
「だな」
見つかった事にメンバー内に安堵の雰囲気が流れる。
鞠亜もそんな彼らと笑い合いながらその懐中時計に手を伸ばした。
ゴォォオオオッッ
「うわっ!!」
シン「マリア!?」
懐中時計に触れた瞬間、突如吹き荒れた豪風。
それは信じられない事にその時計から発生していた。
油断していたのもあり、あっという間に風に呑まれた鞠亜。
その後ろで皆の悲鳴と共にシンタローの切羽詰まった声が聞こえた。
ゴォォオオオォォォ・・・
吹き荒れた豪風が止んだ時にはメカクシ団の姿はどこにもなかったのだった。