【書庫】銀×月小説【Short】
□―心惑い編―
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え……? マジで?
もしかしてさっき食べたチョコレートって……。
どんどん熱が溜まってくる体に、立っていられなくなり、その場に蹲る。
頭がふらつき、何処かに意識が持って行かれそうになる。
「……銀時?」
聞き覚えのある声。
銀時は後ろを振り向くと、キセルを加えた月詠が立っていた。
「どうした? 気分でも悪いのか?」
「嫌……。」
待て、平常を保つんだ俺。
いくらなんでもこいつには手を出しちゃならねぇ。
俺の剣の届く範囲、俺の手が届く範囲の女には手を出しちゃいけねぇんだ。
第一、こいつは百華の頭なんだ、そんなことしたらこいつが困る。
気がつけば俺の体は小刻みに震えていた。
「銀時? おい、大丈夫か? 銀時!」
問いにも答えることも出来ない。
頭がボーッとしてきて、意識が剥離しそうになった。
顔も火照って来て、体中が熱い。
体に感じる冷たい感触。
嗚呼、俺は床に倒れたんだ。
月詠は懸命に俺の名前を呼ぶ。
次第にその声も遠のいて行って……。
やがて、俺の意識は完全に闇に溶けた。
*
「ぎんと……」
体が熱い。
熱があるのだろうか。
早く日輪に知らせ――
と、口が開いた瞬間、銀時に口を塞がれていた。
「日輪達は呼ぶなよ。」
「しかし……。
主、体調が悪いのだろう?
日輪に言って休ませてもらえばい……。」
「いい、俺にはお前がいてくれれば?」
「……は?」
月詠の口から調子の外れた声が漏れた。
今、こいつ何を言ったんじゃ?
わっちがいれくれれば?
なんじゃ、この原始人並みの口説き文句は。
気づけば、銀時の体の熱も引いている。
どことなく、銀時の瞳は微かに潤み、頬も紅潮している。
色気が上がっているように思えた。
「なぁ、月詠。」
銀時の右手がわっちの髪に触れる。
その髪を愛でるように優しく撫でた。
「俺の事、好きか?」
「い、いきなり何を言っておるんじゃ。」
「……ッ!
悪い、俺やっぱり気分が悪いみたいだ。
ちょっと二人きりの所になれる所まで運んでくれないか。」
「………。
わかった。」
月詠は違和感を感じながらも、銀時の肩に手をまわし、武器庫に運んだ。
中は誰もおらず、静まり返っている。
銀時を床に下ろすと、銀時はぐったりと床に崩れた。
「銀時! 待て、今水持ってくるからな。」
月詠はコップに水を注いで銀時に渡す。
銀時はコップを受け取るが、飲もうと言う仕草は見せなかった。
「……銀時? どうした、飲めないのか?」
「………。」
銀時は静かに頷く。
月詠はコップを受け取ると、後頭部を支えながら僅かに銀時の体を起こし、水を飲ませた。