【書庫】銀×月小説【Short】

□―夢の中で漕がれている人に会うって、常にその人の事考えてるから?―
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「……銀時。
彼女は可愛いのか?」
「嗚呼、めっちゃ可愛いよぉ。
毎日会ってるもん、俺。」
「……その娘も、銀時の事が好きなのか?」
「“I LOVE 銀時”って書かれた色紙貰った。」
「………。」


「あーあ、明らかツッキー勘違いしてるアル。」
「本当、可愛そうだね、月詠さん。
相手は結野アナなのに。」

ひのやの長椅子に並んで座っている二人に、神楽と新八はため息をついた。
ちなみに、“I LOVE 銀時”と言う色紙は、外道丸が結野アナに言わせて書いたものらしい。
その色紙を貰った銀時はと言うと……。
その墨で可愛らしい丸み掛かった文字を何度もなぞって、空に掲げて大ジャンプしていた。
良い歳して何してるんだ、この馬鹿。


と、心の中で思っている新八とは裏腹に、ずっと銀時はにやにやしながら花を辺りに舞わせ、ほわんとして雰囲気を纏っている。
ちなみに、万事屋が吉原に来た理由。
至って簡単で、いつものように飯をたかりに来たのである。
今回で四回……嫌、五回目だったかな?
流石に五回目となると菩薩のようだった日輪さんの顔も笑顔に迫力が増していたのだが、気にしないでおこう。
気にしないで運動したり、ご飯食べたりすることは一種のストレスの買い処方ってテレビでやってたな。
皆、悩んだことがあったら、相談したり、紙にその事を書いてみたり、運動したり適量な量を食べたりして、気を紛らわせるんだよ。


「新八、無駄に変なところが長いアル。」
「御免なさい。」


神楽に軽く会釈をする新八。
二人は黙って長椅子の陰から月詠と銀時を見守った。


「……その、銀時。
その娘は……。」
「あー、可愛いな、結野アナ。
俺の嫁になってくれないかな、本当。」
「ケツノアナ?
ぬ、主……!
たわけェェェェェェ!!」


月詠の指と指の間に無数のクナイが握られ、クナイの雨が銀時に降りかかる。
命中率は半端ないもので、全て銀時に刺さった。
体中から血を流しても、まだ銀時の意識はこちらに戻ってこない。

「新八ィ。」
「ん? 何、神楽ちゃん。」
「銀ちゃん、夜中に私がトイレに起きたら、布団を抱きしめながら結野アナの名前何度も連呼してたアル。
何か、定春の鳴き真似の練習してたヨ。」
「………。
うん、なんとなくわかった気がする。
吉原にご飯たかりにきた理由もわかった気がする。」

新八は恐ろしいほど冷めた瞳を銀時に向ける。
同時に、神楽ちゃんに分からなくてよかったと、心の底から安心したのだった。

「結野アナぁ……可愛いよォ。」
「死に晒せェェェェェェェェ!!」

その後、体中に月詠のクナイが刺さりまくった銀時だったが、相変わらずケロリとした表情で花を浮かせていた。







【完】
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