【書庫・絵】頂き物

□道程を振り返って君を想う
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道程を振り返って君を想う


『銀時』

俺にも色々なことがあった。楽しいこと、悲しいこと。

色々と積み重ねてきた。寺子屋で仲間とふざけあいながら、過ごした日々。白刃をきらめかせて、次々と命を奪っていった日々。

人間を続けていけば、出会いと別れは必ず訪れる。好む好まざるに関わらずだ。出会いが訪れれば、その分、別れが訪れる。

そんな中、俺は一人の女に出会った。その女の名前は月詠。そいつとは妙にウマが合った。気付けば、月詠に惹かれつつある自分がいた。

最初は無愛想なヤツだと思っていたが、会う度に表情が柔らかくなっていった。その表情に、俺は心を奪われた。そして、一番惹かれたのは心の強さだった。

決して揺らぐことはない心。吉原を守るためならば、自分のことなど省みない。逃げることなく、事へ当たって傷つきながらも、それを成しえていく。俺には真似が出来ねえ、だからこそ月詠に惹かれたんだろうなあ。

俺と月詠はどうなるだろうなあ。さっき言ったっけ。出会いもあれば、別れもあるって。だとしたら、コイツとの別れもあるのだろうか?だとしても、絶対止めてやる!首根っこ引きずってでも、すがり付いてでも阻止してやる。

臆病者な俺だけど、こいつのためなら話は別だ。最期の最期までお前を護ってやる。消えないように、失わないように俺はお前を護るだろう。俺は何回も自分の人生を繰り返しても、月詠がいるルートへ必ず行き着いてみせるから。

しわくちゃのじじい・ばばあになって「バカな人生だな」って笑い合えるまで。


『月詠』

吉原に売られ、日輪に出会った。わっちは日輪に陽の光を見い出した。その陽の光を守るため、わっちは自分の顔に傷をつけた。

それからわっちは、自分の手を血で汚してきた。全ては吉原を、日輪を守るためなのだと。自分の感情に蓋をして、女を捨てたと心に刻み付けて。

そんな中、わっちは一人の男に出会った。坂田銀時、最初はちゃらんぽらんとした言動と態度、ふざけた男と思っておった。しかし、その男は吉原を自由にしてしまいんした。

一度決めれば、どんな困難があろうとも貫き通す。この一途なまでの心、いや、魂とでも言うのじゃろうか。この男と接するたびに、わっちは何かが解けていくようじゃった。

死んだと思った師匠からの言葉、「惚れたか?この男に」。あの時のわっちは答える事が出来なんだ。この気持ちが何であるか、分からなかったからじゃ。

師匠に囚われた際、助けてくれた銀時に抱きしめられた。そして、わっちを抱えたあの時、わっちははっきりと確信した。「わっちはこの男に惚れてしまいんした」と。

わっちも生まれてから、様々な人と出会い、別れてきた。銀時との出会いは、わっちの一生の中でどの辺に当たるじゃろう?間違いなく、分岐点じゃろうと思う。この出会いが吉原を変え、わっちを変えたのじゃから。

銀時、わっちはぬしを失いたくはない。ぬしがいなくなれば、わっちの道はどうなる?暗い帳が降りたような暗澹たるものになりんす。わっちには、日輪と同じく、ぬしがわっちを照らしてくれる光じゃと思うておる。出来ることなら、望んでくれるなら、わっちはぬしを一生見続けたい。愛しさと慈しみを込めて。


『銀時・月詠』

これから歩んでいく道程は、どんな風になるんだろうか。ぶっちゃけていうと、苦しいのはもうごめんだ。しかし、そうしたのはこれからも見なきゃいけねえし、通らないといけねえかもな。

大きく変わった。これからも色々とまだ変わっていくのだろうし、拒むこともあれば、受け入れることもあるじゃろう。

歩んできた道程にお前がいた。別々の道を通って、何の因果か知らねえがこうして俺たちは出会った。

交わった二つの道。一つとなって進むのか。また、交わったのはほんのわずかで、再び二つに別たれるのか。それはわっちにもわかりんせん。

ただ言える。願わくば、俺は、わっちは・・・一つの道を共に歩みたいと願う。道の終わりを共に迎えたいと切に願う。運命の神がいるのなら願いんす。デコボコでも荒れててもいい、俺たちの道は真っ直ぐな一本の道であることを。
 

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