【書庫】銀×月小説【Short】

□―心惑い編―
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「日輪ァァァァァァ!!」
「ど、どうしたの銀さん。」


銀時たちがひのやに飛び込んできたのは太陽の完全に沈んだ真夜中の事だった。
何事かと日輪は焦りの表情を見せる。

「どうしたんだい?
銀さんたちがここに来るなんて珍しいけど……。
何かあったの!?」
「……を。」
「え?」
「飯を恵んでくれェェェェェェェ!!」
「………。」


銀時たちの悲痛な叫びが吉原に木霊した。





『空腹のときほど周りの物に何でも目が行って更に空腹が増す。』





「………。
とうとう生活費が底を尽きたと。」
「そうアル、もう米一粒すらないネ。
腹と背中がメンチ切り合ってるアル。」
「御免なさい、日輪さん、忙しいでしょうに……。」
「嫌、いいのよ、貴方達は吉原の救世主だもの、これくらいしなきゃ。
それにしても、何でこんな時間に?」
「嫌……あのですね。
今日一日何も食べてないんですよ。
それで夜中に皆揃って空腹が限界を超えて……。
この時間じゃ外食するにしても、ディナーランチとかで高いでしょ?
それで、顔見知りのある日輪さんの所に……。」
「そう……。
待ってて、今から雑炊でも作ってくるわ。」
「嗚呼、サンキューな。」



それでも待っている時間でも空腹は増す一歩だった。
銀時は周りに何かないかと辺りを見渡す。


「お。」


小さな箱に大量のチョコレートが詰まっていた。
何だ、モザイク屋でもこんな菓子ぐらいは置いてるのか。
銀時は周りの人に気づかれないようにひょいっとそのチョコレートを口に運んだ。
口の中に甘い味が広がり、その中にあるほのかな苦み。
ふむ、ビターチョコだろうか。
しかし、中途半端に菓子を摘まむと余計に腹が減ってくる。
これ以上チョコレートを摘まむと全部食べてしまいそうだったので、ここはいったん断念した。
襖越しに漂ってくる食欲をそそるいい香り。
ぐぅ、と銀時の腹が鳴った。



「うわぁい! 飯アル! 久しぶりのご飯アル!」
「ちょっ、神楽ちゃん!」



神楽は弾んだ声で隣の部屋へ飛び込んで行った。
新八もそれを追いかける。
銀時もついていこうかと思った時、ふと違和感があった。
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