【書庫】拍手小説
□―考えれば考えるほど、その事は大きく胸を支配して行く―
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「………。」
キセルから紫煙が吐き出され、漆黒の世界が煙に満たされる。
あの男は今どうしているだろうか。
そんな事が脳裏を支配して仕方がない。
何故だろう、何故あの男の事が気になるのだろう。
月詠の脳内はあの男の事で犇めいていた。
高鳴る心臓。
トクトクの波打つ心臓が鬱陶しくなって、月詠は胸に手を当てる。
――何故。
わっちは女を捨てたはずなのに。
何故、何故、と自問自答しても答えてくれる声もなく。
月詠はただ目を閉じて心を鎮めようとしていた。
考えるな、あの男の事は考えるな――……!
「わっちは、本当に頭が可笑しくなってしまったんでありんしょうか。」
暫くあの男には会わない。
例え、向こうから現れたとしても。