BOX

□ゲームレビュー
30ページ/67ページ

【ワンダと巨像(PS4版)】

PS2用ソフトを原作とするフルリメイク作品。
知恵と勇気を振り絞って巨大な像を打ち倒すアクションアドベンチャーだが、敵を薙ぎ倒して爽快感を得るタイプのゲームではなく、やりきれない重苦しさが漂っているのが特徴。

キャッチコピーは「最後の一撃は、せつない。」
ややネタバレになってしまうが、鬱ゲー好きどんとこい!な内容になっている。

原作の方は同一の世界観を共有する作品が他に2つ発売されており、「ICO」→「ワンダと巨像」→「人喰いの大鷲トリコ」の順で発表されている。
本作の原作は未プレイだが、ICOはPS2時代にプレイしていたので、本作もどこか懐かしい感じがした。


・ストーリー

失われた少女の魂を呼び戻すため、青年ワンダは愛馬アグロと共に古の地を駆ける。

人間の掟に背こうとも、自分の身がどうなろうとも、ただ大切な人のために全てをなげうって戦うワンダ。

巨像を倒せば少女は生き返ると信じ、命がけで剣を振るうワンダの願いは叶うのか−−。


・登場人物(動物)紹介

〈ワンダ〉
常人離れした打たれ強さと握力を持つ青年。
場合によっては50mくらいの高さから落ちても死なない。
前作ICOの少年より確実に頑健。
オープニングでしか台詞を喋らないが、プレイしていくうちに彼の何があっても挫けない心の強さを感じ取れることだろう。

PS2の原作とPS4のリメイク版でかなり顔が変わっており、原作では精悍かつ端正なイケメンで、リメイク版ではあどけなさの残る顔立ちをしている。

基本的には優しげな雰囲気だが、アグロ騎乗時の掛け声なんかは凛としていてかっこいい。
また、騎乗しながら弓を射ることも可能で、これがまた痺れるほどかっこいい。
弓好きは大歓喜できる。

また、巨像を倒すことで呪われていき、明らかに体に影響が出ていくのに、それでも黙々と巨像討伐に向かうのが悲壮感漂っている。
弱音を全く吐かないのが、逆に物悲しい。


〈アグロ〉
黒毛の雌馬。
このゲームのヒロインと呼んでも差し支えないほどの癒しの存在。
ワンダが近くにいるとこちらを見つめてくるのだが、ワンダも顔をアグロの方に向けるので相思相愛感が良い。
つぶらな瞳がキュート。
しかも撫でる事が可能。

放っておくとどっかに歩いて行ってしまう事もあるが、ワンダが離れると呼ばなくても猛ダッシュで追いかけてくる。
それはもう後ろからワンダに激突するくらいの勢いで駆けてくる。
「置いていかないで!」みたいな感じがしてかわいい。

勿論呼べばすぐに駆けつけてくれるし、どんな危険な状況でもワンダを振り落とす事は無い。
危ないかなぁと思って巨像戦前に下馬して徒歩で巨像に近づいても、いつのまにかアグロが近くに来ていて、その悲鳴が聞こえてきたりする。
まじ健気。

ワンダが乗ってない時に巨像が来るとさすがに怯えて逃げてしまうが、呼べば絶対に来てくれる。
心の絆を感じる。

岩や段差が多くて足場の悪いところで全力疾走させようとしたり、既に全力疾走しているのにもっと急かしたりすると、悲鳴のような嘶きをする。
これを聞くとなんだか申し訳無い気持ちになる。

非常に賢いため、直線的なルートでワンダの元へたどり着けない時はきちんと迂回してきてくれるし、気を抜くと落下死しそうな崖沿いの小道も、アグロに乗っていれば転落しない。
南西の岬付近の途中数ヵ所崩れている橋なんかは、全力疾走するアグロの跳躍が無いと渡れない。
まさに相棒。

たまに草を食んでいたり、お水を飲んでいたりする。
かわいい。


〈ドルミン〉
魂を操る術を持つと云われている謎の存在。
わりとポエマー。
今は実体を持たないようで、声を聞くことしかできない。
最初は偉大なる魔術師みたいなもんかと思ってたら違った。

巨像を倒すのはドルミン側の希望によるもので、そのため巨像戦で困っているとアドバイスをくれる。
だがこのアドバイスが役に立ったり立たなかったりする代物で、意外とポンコツなんじゃないかと思ったりする。
イメージとしてはMGSシリーズの無線に近いかも。

でもドルミンのおかげで倒せた巨像もいるのでプレイヤーとしては大変感謝しているし、心の中では親愛の情を込めて「ドルミン先生!」と呼んでいる。

また、クリア後のタイムアタックを頑張るとご褒美を授けてくれるのだが、いつもの厳かな口調でおまけアイテムの説明までしてくれるので、非常にシュール。
(例:「それは白毛のアグロ……それを使えば、馬の見た目を変えることができる……」)

というわけで、なんだかんだでアグロに次ぐ癒し要員な気がする。


〈エモン〉
禁を破ったワンダを追い、護衛を引き連れて古の地に駆けつけたシャーマンの人。
憎たらしいジジイだが、やってることは正しい。
使える術のバリエーションが豊富で、プレイヤーの度肝を抜いてくれる。


〈モノ〉
眠り姫系ヒロイン。
清楚な美少女で、ICOのヨルダを彷彿とさせる、刺繍入りの白いワンピースを着ている。
ワンダだけでなく、アグロとも仲が良かったようだ。

ゲーム開始時点で故人であり、名前はエンディングのクレジット見るまで不明。
ワンダによれば生け贄にされてしまったらしい。
一応スタート地点の祭壇に横たえられているので視界には何度も入るが、台詞がほぼ皆無なので影が薄い。


・巨像紹介

各巨像感想のページを作ったのでそちらで。


・良かった点

アグロがかわいい。

以上。


……真面目に書くと、雄大な大自然の中を自由に駆け回ることができる。
例えるなら、映画「ロード・オブ・ザ・リング」に近い雰囲気。
光の表現が美しいことにも定評があり、ぼーっとアグロに乗って走ってるだけでも楽しい。

また、各地に廃墟が点在しており、自然に飲み込まれつつある古代遺跡や巨大建造物を散策できる。
あまりの偉容に圧倒される事も多く、まさに神話の世界という感じ。

水中の描写も非常にリアルで、カメラが水面より下を映すようになるタイミングで、まるで本当に水の中に潜ったかのように物音が急に掻き消える。見え方が歪むのも良い。

PS4版からフォトモードが追加されているので、これらの景色を手軽に撮影できる。
露出や彩度を細かく設定できる他、設定パターンが最初からいくつか搭載されているので、プロのような写真を素人でも簡単に撮れるようになっている。
完全に自己満足なのだが、これが結構楽しい。

通常フィールドBGMは無く、風の音や鳥の声がダイレクトに聴こえる。
静けさが耳に心地よいのだが、人によっては寂しいと感じるかもしれない。

逆に巨像戦が始まると、緊迫感を感じるBGMが流れてドキドキさせてくれる。
そして巨像によじ登る事に成功すると曲がガラッと変わり、クライマックスにふさわしい盛り上がりを演出してくれる。

この曲達が本当に素晴らしくて、かっこいいだけでなく胸が締め付けられるような切なさを感じる。
巨像達も個性豊かで、それぞれ倒し方があり、それを探すのが楽しい。

また、その辺の岩山は大抵登ることができ、ここ無理だろ!みたいな狭い足場にジャンプで飛び移っていくと、キラキラ光るコインが配置されていることがある。
コインからは幻想的で美しい音が鳴っていて、見つけるとちょっと嬉しい。
もし何もなくても、高いところに登るのが純粋に好き。

コインは79個全部拾うと良いことがあり、高所に限らず変なところでよく見つかる。(例:波に逆らって遊んでたら海中で発見)
自力で全部見つけるのは非常に厳しいので、チェックリストを作って攻略サイトを見ながらやるのが吉。
攻略見てもワケわからん所にあったりするので、達成感は十二分にある。


・悪かった点

カメラワークが独特で、慎重な操作を要求される場面でも平気で勝手にカメラが動くのでやりづらい時がある。

また、ゲーム内では操作タイプを選ぶ画面でしか操作方法の確認ができないのだが、R2ボタンに複数の役割が振られているのに「しゃがむ」としか書かれていない。(※モダン1)

実際は「祈る」「拾う」「潜水」も兼ねており、特に拾う動作は第11の巨像戦で必須なのだが、そこらへんが説明不足な気がする。

オンライン説明書見つけられなかったんだけど、もっと探せばあるんだろうか?

クリア後のタイムアタックでもらえるアイテムも、マップ画面で△を押すと出てくるアイテム画面から装備する必要があるのだが、これ別に通常のメニュー画面でやれば良くない?と思う。

あとたまに巨像にハメ殺されそうになる。
(※第11と第14の巨像)

特に第14の巨像には、
壁際に追い詰められた状態で気絶→ぶっ飛ばされる→気絶→ぶっ飛ばされる→気絶→ぶっ飛ばされる→死
みたいなのを2回もやられており、非常に憎い。
例えるならオペラクのGバーキンかタイラントと同じくらい憎い。

まあ慣れれば簡単に倒せるんだけどな!

あとはセーブスロット一番上のデータが勝手に上書きされる事があったり、NEWゲーム+を選択する度に勝手にセーブデータが増えたり、セーブデータ管理の不満がややある。


・小ネタ、コツ等

@後ろからアグロが駆け寄ってきた時、ワンダが前方に向かって走り続けていれば、疾走するアグロがワンダに並んだ瞬間にアグロの速度を落とさず騎乗する事が可能。

A高所からジャンプで飛び降りる際、うまくやれば直接アグロに騎乗できる。
(※モダン操作のみ)

Bアグロを撫でる時、モダン操作(素手+□ボタン)は立ち位置が悪いとアグロに斬りつけてしまう事があるが、クラシック操作(素手+◯ボタン)だとそうならないので安心。

C光るトカゲを狩る際は、なるべく離れたところから弓で射るとやりやすい。
逆に近くの壁にいるなら剣で斬りつける方がいい。

D光っていないトカゲのしっぽも、食べるとなんかショボい音が鳴って握力が微増したような感じの表示が出る。

Eタイトル画面のデモムービーをスキップした後しばらく待っていると、最後にセーブした祠の上空を鷹が飛んでいくムービーが流れる。
基本的に同じルートを2回飛行して終了するが、森の中の祠からスタートした場合、一度森から出るともう森には戻らない。やはり鷹は狭いのが嫌なのだろうか。

Fいかづちの銛を海面に投げると、着水した瞬間に弾き返される。水の抵抗?
なお湖面だと静かに浮く。
魚に当てれば仕留める事が可能。

G祭壇付近のハトに掴まる時は、R2を押しながら歩く忍び歩きで近寄るとやりやすい。

Hカメの甲羅は弓矢を弾く。

Iダメージを受けて気絶した時、レバガチャするとやや早く起き上がれる気がする。(未検証)

J大橋を渡って古の地の入口まで走って行く際、下を見るとアグロが地上ルートで追いかけて来てくれている。

K巨像を倒した後、急いでアグロに乗ってからワンダが影に貫かれると、衝撃でアグロも倒れてしまう。

L弓を構えてから矢を射ずに下ろす時は、□ボタンを押してからR1を離す。(モダン操作)


・感想(ネタバレあり)

私は広くて誰もいない場所でぼーっと遠くを眺めるのが好きなんだけど、このゲームでもそういう気分が味わえて良かった。
例えば草原をアグロに乗って駆けていくと、孤独感に包まれると同時に開放的な気分になる。
そうなると現実の自分の存在を一瞬でも忘れることができて、この没入感がたまらなく好きだった。

いにしえの剣を翳しての巨像探しについては、宝探しをしているようなワクワク感があった。
この道はどこに繋がっているのかなぁとか、洞窟を抜けたところで突然目の前に滝が現れて思わず見惚れてしまったりとか、随所にドキドキが散りばめられていて良かったと思う。

巨像に関しては、倒すにあたって「かわいそう」という気持ちはほとんど沸いてこなかった。
たぶん、ゴーレムのようなものだと感じていたからだろう。

どちらかといえば、巨像に立ち向かわざるを得なくなったワンダの、切羽詰まった心境を想像して胸が苦しくなった。
そして苦労に苦労を重ねて巨像によじ登り、やっとの思いでトドメを刺す瞬間には悲願達成のカタルシスを感じた。

だが巨像を倒し、不吉な黒い影を噴出させて膝から崩れ落ちるワンダを目にすると、高揚感は跡形もなく吹き飛び、不安が襲ってくる。
(慣れてくると影からどこまで逃げれるかチャレンジし始めて爆笑していたけど)

禁忌を犯した報いを受けているようなワンダの様子は、これからの不穏な展開を暗示しているようで、鬱ゲー好きとしてはゾクゾクし……げふん、物語の結末が気になってしょうがなかった。

だが一番精神的に影響が大きかったのは、ワンダ関連のシーンではなくてアグロが谷底へ転落したシーンだった。
思わずテレビの前で叫んでしまったし、心に穴が空くような喪失感があった。

あまりにもショックすぎてラスボス戦はまったく集中できなかったし、「モノを生き返らせようとしなければアグロがこんな目に遭わなくて済んだのに……」と、心の中でワンダを責めてしまったりした。

(しかしICOでも最後にヨルダと離れ離れになって少年一人で頑張るパートがあるが、あの時も喪失感が酷かったし、この法則でいけばヨルダのポジションがアグロ……つまりアグロがヒロインではないだろうか?(錯乱))

また、死者を生き返らせようとしてろくでもない事になる作品が多いので、エンディングでモノが健康的な雰囲気で生き返ってびっくりしたし、ワンダもアグロもわずかに救いがある終わり方をしたのが意外だった。

ただしワンダについては、これまでの記憶も何もかも失われてしまっているだろうから、そういう意味ではプレイヤーの知っているワンダは死んでしまったと言えるのかもしれない。

初めてエンディングを迎えた時は追っ手を一人も返り討ちにできなくてフラストレーションが溜まったが、今ではあのエンディングで良かったと思う。

ワンダの望みはモノの命ただ一つだった訳で、他の全てが失われてもそれだけはどうにか叶えることができた。
きっと「それ『しか』残らない」というのが、物語の美しさや儚さを際立たせているのだろう。


−−−−

以上、レビューでした。
不思議な余韻が残るゲームなので、トゥルーエンドみたいなのが好きな人はぜひどうぞ。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ