丁装本


□野良犬
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灰色のコンクリートジャングル
一匹の野良犬が泣いている
冷たい雨に濡れて震えて
差し述べられた手に噛みついて
見放されてまた一匹ぼっち

飼われてる間に
すっかり牙は抜かれていた
駆け抜ける脚力も
獲物を捉える目も
耳も奪われていた

餌を探してゴミを漁る
先輩野良犬と奪い合う
縄張りなんて持ってない
この世での戦い方を
今学び始めた

お前は野良犬
立ち上がって涙を拭え
お前は野良犬
首輪や鎖に頼るな
お前は野良犬
目的地は無いけども
お前は野良犬
どこまでも行ける

惨めだよな
ガラスに映った自分
暖かい家にいた時は
フサフサだった毛並も
いつの間にか汚れてしまった

孤独と寄り添って
今日も一匹ぼっち
この街から抜け出せない
自ら大地に立ってから
初めて血の味を知った

憐れみや同情なんて要らない
人の足元で忌み嫌われて
蹴飛ばされ無視され
それでも強く
強く生きていけ

お前は野良犬
声を張り挙げろ
お前は野良犬
世界の片隅で一匹
お前は野良犬
手と足があるなら
お前は野良犬
さあ前を見て進め

雨の街角のブルースマン
ギターとハープのメロディが包む
その傍らに伏せて
振り払えないまま
今日も短い眠りにつく

毎日想い出を求めて
この街を這いずり回る
希望なんて期待しちゃいない
欲しいものは全部
自分でなんとかしなきゃいけない

ふと見上げた空
雨雲の隙間から
光の束が見えた
首輪と屋根があった頃には
気付けなかった空の色

お前は野良犬
孤独な歌を歌え
お前は野良犬
飼い犬にはなれない
お前は野良犬
自分だけが頼り
お前は野良犬
立ち上がって進め
お前は野良犬
振り向くのはやめて
お前は野良犬
前を見て進め
お前は野良犬
誰がなんと言おうと
お前は野良犬
負け犬じゃない

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