焔の光 ‐鬼‐

□焔の光 ‐漆‐
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「あいつとはどうだ?」

宇髄家へ帰宅すると兄様が訊いてきた

『実弥さん?』

「・・・実‥弥さん?!」

なんで名前で呼ぶ中になってんだと思ったら

『師範て呼んだらガラじゃねぇって怒られた』

「不死川でいいじゃねえか」

『舌噛んだ』

「はぁ?」

『しなずがわって何回か呼んだ時、思いっきり舌噛んだらもう下の名前でいいって・・・』

その光景が目に浮かぶ

「・・・あっそォ」

くだらねぇ理由だった

吉原の花街への潜入捜査で姉様たちは不在。二人で過ごすのはあんまりないなぁと思いつつ寧々は任務前に食べれるように夕餉の準備をしていた

『兄様』

「あ?」

『ありがとう』

「んだよ、急に」

『実弥さんのとこへ連れてってくれたのは煉獄さんが亡くなったの、ちゃんと受け入れられなかったから、かなぁって』

いつの間にこんな風に考えられるようになったんだ。体も心もいつの間にか子供じゃなくなってきてんだなと少し寂しく感じた

「環境変えるのもいいと思ったし、不死川がお前見てみてやるって言ったんだよ」

『実弥さんは・・・優しい』

一見乱暴だし言葉も悪いけど、間違ったことは言わないし、二人の時はわかりやすく話してくれる

一隊員になって、一人で鬼狩りをしていた時よりよっぽど心が落ちついていた

恵まれた環境だな、と寧々は思う

知り合いは少ないけども、みんな本当に良い人たちばかりだ

「来いよ」

『ふぁ?』

「たまには派手にかわいがってやる」

がばっと抱き着いてきた天元を押し返すがびくともしない

『やだぁー!』

本当は嫌じゃない。泣きたくなるくらい優しい兄様に感謝してる

「よしよーし」

こんなにされると涙腺緩むし。

『兄様』

「お?」

ぎゅっと首元に抱きつかれ天元がピタリと止まった

『大好きです』

嫁になる気になったのか。てか耳元でこんなこと言われたら・・・理性が揺らぎそうだ

『兄様も姉様も大好きです。ここに拾われてあたし幸せです』

「拾った言うな、お前は俺たちの大事な妹だろが」

『えへへ』


大きくて安心する腕の中であっとゆう間に眠りに落ちた寧々

ぱたぱたと零れ落ちる涙

“煉獄さん”
“一緒に連れてって”

きっと毎日のように夢の中で煉獄に会ってるのに幸せな時間では無さそうだ。
煉獄、頼むから寧々の心を連れていくなと天元は心の中で呟いた

どうしたら救ってやれるのだろう
村と両親を亡くした時も立ちなおるのにかなりの時間を費やしたんだ

煉獄が逝って数ヶ月。無理もねえか、と 憎らしいくらい晴れた空を見上げた天元もふーっと息をつき仮眠の為に目を瞑った
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