焔の光 ‐鬼‐

□ 焔の光 ‐伍‐
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地響きと共に現れた鬼の目には上弦の参の文字

「稀血か、俺は女は食わんが・・・確かにいい匂いだ」

物凄い速さで迫ってきた鬼を後方へ飛び避けた

炭治郎には見えていない速さだ



すぐに追いついてくる

「寧々!」

煉獄さんの声と姿を確認しそちらへ走る
が傷口がひらき、動きが僅かに鈍った瞬間、腕を捕まれ引き倒された

『・・・っ、や・・・』

隊服を捲りあげ傷口に鬼が舌を這わせる

「甘いな・・・これはそこらの鬼には堪らんだろう。殺さずに俺が守ってやるから一緒に来い、死ぬまで可愛がってやるぞ」

「炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天」

寧々でさえ見たことない気迫の杏寿郎が鬼に刀を振り上げた

「・・・触るな」

さっと距離をとった鬼の左手は縦に綺麗に裂けていた

「殺さないと言っているだろう。何をそんなに怒っている」

「寧々に触るなと言っている!」

慌てて隊服を整えている寧々を抱き上げた杏寿郎は炭治郎の元まで移動した

「呼吸」

止血をしろと言っているのはわかる。だけど身体が震えてうまくいかない

「・・・落ち着け」

鬼から目を離すことなく、ぎゅっと抱きしめてくれる

少し落ち着きゆっくりと呼吸すると頭を撫でてくれた

急いで血を水で洗い流す

鬼が腕を上げるとあっという間に再生していった

(再生が速い・・・この圧迫感と凄まじい鬼気 これが上弦)

そう思いながら杏寿郎は立ち上がった

ごくり、と鬼が喉を鳴らした

「ああ・・・初めてだな、こんな事は。一度味わったら忘れられない、至福の味か・・・鬼を虜にする血だ。その弱さではすぐに鬼たちの慰みものになるだろう」

その言葉に杏寿郎の目つきが変わり日輪刀を構えた

「いい刀だ。素晴らしい提案をしよう・・・お前も鬼にならないか」

「ならない。初対面だが俺はすでに君のことがきらいだ」

杏寿郎の周りに炎の闘気が見える

「その闘気練り上げられている。至高の領域に近い。お前の強さ・・・柱だな?」

「俺は炎柱、煉獄杏寿郎だ」

「俺は猗窩座。杏寿郎なぜお前が至高の領域に踏み込めないのか教えてやろう。人間だからだ 老いるからだ 死ぬからだ。鬼になろう杏寿郎 そうすれば百年でも二百年でも鍛錬し続けられる。強くなれる」

「老いることも死ぬことも人間という儚い生き物の美しさだ。老いるからこそ死にからこそ、堪らなく愛おしく、尊いのだ。強さというものは肉体に対してのみ使う言葉ではない。寧々は弱くない、侮辱するな
君と俺とでは価値基準が違うようだ。俺は如何なる理由があろうとも鬼にはならない」
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