焔の光 ‐鬼‐
□焔の光 ‐壱‐
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ガチャンとお皿が割れた大きな音に驚いて少女が台所へと走っていった
『おかーさん?』
「割っちゃった、入っちゃ駄目よ」
そう言われる前に足を踏み入れて思いっきり踏んでしまった
『いたっ・・・』
ぽたっと真っ赤な血が滴ったのを見て母親が慌てて手ぬぐいを持ってきた
「洗って手当てしなきゃ」
痛みにすんすんと泣きながらも就寝の時間でお蒲団へと入った
そのわずか数時間後
真っ暗な闇の中、響き渡る悲鳴に幼い少女は目を覚ました
いつもなら静かな村。だがほぼ全ての家は壊され火の手が上がり初めて見る化け物達が村人を襲っていた
逃げ惑う人々。恐怖に脅えながら窓から外を眺めた
これは夢?
「稀血はどこだ」
ものすごい速さで家の方まで移動してきた化物がニィっと笑った
「ミツケタ」
その時扉が開き手を引かれた
「逃げなさい」
『おとーさん・・・』
母親と家から出て森の方へと走った
お皿で切った足が痛い
逃がしてくれた父親を案じ何度も振り返りながら必死に走るが自分らを飛び越え
、目の前に飛んできた化物に足を止めた
ぎゅうっと母親に抱きしめられ恐怖に目をつぶった瞬間、頬に飛んできた飛沫
包んでくれていた温もりが消え恐る恐る目を開けると、そこには母親の頭を口に咥えた化物が笑みを浮かべ立っていた
抱きしめてくれている母親は首から上が無かった
「お前が最後だ、稀血は美味いからなぁ」
背後に現れた影に少女はびくりと身体を震わせた
「お前が居たからこの村に来たんだぜ、楽しませてくれよ」
気付けば三体の化け物に囲まれている
目の前の化物の口から見えるのはいつの間にか母親の足だけになっていた
何故だか分からないが自分のせいでこの惨状だと言われ、ぽろぽろと零れ落ちる涙。竦んで動かない足
あまりの恐怖に頭が真っ白になって、一言も声なんて出てこなかった
一際強い風が吹きその場から少女が消えていた
「稀血!」
化物が辺りを見渡すと4つの影が月夜に浮かんでいる
いつの間にかその中の一人に少女は抱えられていた
「逃げるぞ、無茶はするな 生きてもどれ」
迫ってくる化物を他の3人が翻弄しながら森の中を駆け抜け、夜明けを迎えた頃に少女を抱えていた人物の足は止まった