焔の光 ‐鬼‐

□焔の光 ‐弐‐
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その晩、寧々は千寿郎と共に任務に出かける杏寿郎に合わせて少し早めの夕餉を作っていた

「寧々はとっても手際がいいですね」と千寿郎に褒められしっかり仕込んでくれた三人の姉に感謝した

そして三人で食卓を囲む

相変わらずお酒を飲んで寝ている父は部屋から出てこない

千寿郎が毎回ご飯を運んでいるようだった


「いただきます」と声がそろう

「う・・・」

いつもなら「うまい、うまい」と続くのに杏寿郎の手が止まり寧々が作ったお味噌汁を見ていた

(ありゃ、嫌いなもの入ってたかな・・・)

それとも口に合わなかったか、と不安になる

「これは寧々が作ったのか・・・?」

『は、はい』

「とても母の味に似ていて・・・驚いた」

それを聞いて千寿郎も一口飲み

「すごく美味しい・・・」

「ぜひまた作ってくれ」

『はい、喜んで』

千寿郎に母の味噌汁の味の記憶はなかったがこんな味だったのかと感動している

そして襖を隔てた奥の部屋では父親の槇寿郎も静かに涙を流していた


週に一回は宇髄家に帰る、そんな生活が半年、一年と続いていた


杏寿郎が寧々にそろそろ実践をさせようかとを考えていた頃ある人物が煉獄家を訪ねてきた

桃色の髪のかわいらしい女の人だった

甘露寺蜜璃

炎柱に弟子入りしたいとの事だがその炎柱の槇寿郎はあの状態だ
命があれば任務には向かうが酒気を帯びた状態のことが多くなり任務のない時は飲んで寝ている

とても面倒を見ることは出来なさそうなので杏寿郎がみることになった


(すごいな蜜璃ちゃん)

恵まれた体型に力
自分とは打ち合ってる時は煉獄さん自身の鍛錬にもなりはしない

目の前で打ち合う二人は本気で、煉獄さん自身がとても生き生きしてみえた

あたしは一年以上ここに居るのに蜜璃ちゃんにどんどん抜かれていくのがわかる


(むむむむー、落ち込みそ・・・)

気分を変えようと寧々は休憩の時食べるお菓子を作り始めた

「寧々?稽古は・・・」

一人、鍛錬していた千寿郎もそろそろと思い用意しに来たようだ

『気分転換!』

言いながら茹でた薩摩芋を潰していたのだが意図せず涙が溢れていた

千寿郎には痛いほど良く分かっていた
努力しても努力しても追いつけない兄の後ろ姿

泣いている寧々と自分と重なる

「寧々・・・」

『ごめ・・・、だいじょうぶ』

ぶんぶんっと首を振った寧々は、ぱんっと自分の頬を両手で打って千寿郎に笑顔を見せた

『がんばろ』

「うん、頑張ろう」
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