脱色
□この瞳が、最後の最期に映す世界
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「もし私が急に…あなたの前から居なくなったら、どうする?」
ネリエルの突然の問いかけに、ノイトラは構えた斬魂刀を地へと降ろした。
常の戯れか、殺し合いか。
到底ネリエルに力の及ばないノイトラの額には、早くも汗が光っていた。
「あァ?訳わかんねぇ、どっか出掛けんのかよ?」
どこか間の抜けたノイトラの言葉に、ネリエルは首を左右に振り、すぐそばの断崖絶壁へと足を進める。
白い砂漠の中に存在する、底の無い崖。
落ちれば一溜まりも無いだろう。
ネリエルはそこに腰を下ろし、投げ出した足を軽く揺する。
「そうじゃなくて。私が死んだらどうする?って話」
「考えた事無ェ」
「じゃあ、今考えて」
いつもとは違う雰囲気を纏うネリエルに、ノイトラは困惑したように唸るだけだった。巨大な斬魂刀を砂上に放り投げたまま、ネリエルのそばに屈み込む。
「あー…アレか?…鬱病」
「まさか!そんな訳無いでしょ」
いつまでも真剣に答えようとしないノイトラに、ネリエルは呆れたように溜め息を洩らし、ノイトラの額を軽く小突いた。
鈍い痛みが、ノイトラの額から全身に伝わる。
「もう、例えばー…私が誰かに殺される・って仮定したとしたら?」
「…てめぇを殺せる奴っつったら、限られてくるだろ」
藍染に、東仙に、…市丸。
それから十刃の─…。
ノイトラの頭の中に次々と、人物の名前と共に顔が浮かび上がってくる。
その時、ネリエルの人差し指が己に向けられている事に気が付いた。