脱色
□君をつれて遥か遠く
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…これで、三度目。
テスラは自宮より衣を僅かに乱し、駆けてくるネリエルを目にした。
その頬は明らかに濡れていて、溢れる涙を拭う所作が目立つ。
少し離れた位置より、テスラはネリエルを見守るように佇んでいた。
きっとまた、ノイトラ様のせいだろう。そう思案を巡らせては溜め息を洩らした。
テスラがネリエルの涙する姿を見たのはこれで、三度目。初めて彼女が一人嗚咽を洩らし泣きじゃくる場面に遭遇した時は、驚きよりも先に愛しさを感じた。
普段は滅多に己の弱みを見せないネリエルの、癖だろうか。
両の掌で涙を拭う様は幼さを感じさせ、テスラに守りたい、と思わせたのだ。
ネリエルの癖を、テスラは幾つも知っている。
それ程、ネリエルを見てきたのだから。
勿論、ノイトラを想い涙を流している時は必ずその名を口にしながら、…という癖までも。
「…ッ、ノイトラぁ……」
ネリエルの嗚咽混じりの声が廊下に響き渡った時、テスラは自身を襲う胸の痛みを堪えるように、瞼を閉じた。