脱色
□届けたい、…でも届かない
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いつの間にか気になっていた。
獣のように本能を剥き出してくる、彼の想いは大きくて。
…最初は戸惑いもした。
恐れて逃げようともした。
たけど、仕方無いじゃない?
何時の間にかそれが、心地良くなってたんだもの。
彼が複数の女の人と関係を持っているのは、知っている。
本当の気持ちを告げるため何度も訪れた、彼の家。その度に聞こえてくる嬌声は、私の彼への想いを閉じ込めた。
「あーあ、どうしてあんな人を好きになっちゃったんだろう」
誰に愚痴る訳でも無く、私は青空に向かって呟いた。
自分の宮にある塔のてっぺんは、空に近付けるから。
私は日に何度もここにくる。
私だけの場所。
そんな時、彼の霊圧が近付いてくるのを感じ取った。
いつもは 私の後を付いて回る彼、だけど私のお気に入りの場所はまだ教えてないから。
私は脅かせるつもりで、塔から少し身を乗り出して彼を眺めた。