脱色
□思うままに抱き締めて
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あと少し。
………それなのに。
ネリエルは目の前の男の髪を一房、指に絡め取る。
それは、これからしようとする行為の照れ隠しか否か。
目の前のノイトラの挑発的な瞳が、ネリエルを捉えた。
二人の距離は互いの吐息が触れ合う程。
「どうしたんだ?してみろよ」
ノイトラの笑い声が室内に響き渡る。
己の髪を絡め取るネリエルの手を握ると、ノイトラはゆっくり、ゆっくりと己の元へ引き寄せた。
それでも近付いた距離は互いの上唇、その先の皮膚が僅かに重なる程度で。
…いっその事、このまま口付けてくれれば楽だったのに。ネリエルは目の前の愛しい男を前に、心で呟く。
それも一時の事。
一向に深く重なる気配のない唇と、故意にそうするノイトラの意地悪な笑みに耐えきれず、ネリエルは思わず顔を逸らした。
「…そんな事、言われても…」
「あァ?俺とキスすんのがそんなに嫌かァ?」
「 …ッ!そんなワケないでしょ。ただ…恥ずかしいだけ」