脱色
□それでも空は青く、青く
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ノイトラより放たれた虚閃は大きく開かれたネリエルの掌に消えていく。光は見る見る内に小さくなり、ネリエルと一体化した。
虚閃が何の効果も成さないと知ると、ノイトラは駆け出し背を向けたままのネリエルの首に両手をかけた。
「さァて、どうする?ソレを返すか、…さもねェと…」
「さもないと?あなたに私が、殺せるの?」
尚もネリエルの声に恐怖は見られず。
ノイトラはチッと舌打ちを漏らし、僅かに手指の力を込めた。
ノイトラの細い手指はネリエルの白い柔らかな首筋に食い込むものの、それ以上力が込められる事は無かった。
「…ッ、な…に?殺さ、ないの…?」
気道を、声帯を圧迫されているせいか発声を満足に出来ないネリエルのか細い声が、青空一杯に広がる。
途端、ノイトラの力が弱まった。
「出来るワケ無ェだろ。てめぇも解れよ」
ゆっくり、ノイトラが呟いた。
それはとても、小さく。
まるで懺悔にも似ていて。
ネリエルに直に、背中越しのノイトラの震えが伝わった。
「解らない。私には解らないわ」