脱色
□それでも空は青く、青く
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「そうねぇ。自分の気持ちに素直になったら、返してあげる」
「大事なものなんでしょ」
そう口にしたネリエルの手には、先程取り上げたばかりのノイトラの斬魂刀がしっかり握られていた。
その表情は幾分か余裕を見せ、口元は緩く綻んで。
暫くの間、ノイトラの視線を奪った。
「…あァ?ふざけんじゃねェよ!てめぇ、ズリィんじゃねェの?」
空は快晴。
ノイトラはネリエルの柔らかな一撃にて地へと叩きつけられた体を起こし、砂埃を乱暴に払った。
何かの武器を持たないままでは、到底彼女には叶いっこない。
それは、ノイトラ自身がよく知っていた。
ネリエルは自分の方へ歩み寄るノイトラに怯えもせず、まるで挑発をするかのように背を向け、後ろ手でノイトラにおいで、おいでと手招きをする。
「だって、私の事が好きなんでしょう?好きで好きで堪らなくて。夜も眠れない、位…」
次々と紡がれるネリエルの言葉にノイトラは表情を変え、背を向ける彼女へと虚閃を放つ。
その表情は常の冷徹さとは異なり、幾らか朱に染まっていた。
「ば…ッ、自意識過剰。誰がてめぇみてェなクソアマ…」