オルタナ 1
□第8話
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スピカに手を引かれ、連れて来られたのは人気のない路地裏だった。
ヒロは袋小路を背負わされ、逃げ場を失う。
だが今は、そんな事はどうでもよかった。
「ねぇヒロ君、あたしさっきも言ったけど、キミにすごく興味あってね……」
「……うん」
虚ろな目で頷くヒロ。
「だから……いいでしょ?」
スピカヒロの首に手を回す。ヒロも気付かぬ内にスピカの腰を抱いていた。
お互いの体温が混ざり合う。熱い。
顔が近付く。もう少し、あと数センチといったところで、ヒロの脳裏に誰かの笑顔が蘇る。
それは美しい銀髪、燃え盛る紅蓮の瞳で、少し俯きがちに照れたように微笑む少女。
それは活発で、夏の陽を浴びて咲き誇る向日葵のような少女。
「だめだ!」
我に返り、スピカを突き放す。
「お、俺達出会ったばっかりだし、その……とにかくごめん!」
ヒロはスピカの横をすり抜け、駆けていった。
「……さすがね。でも、カワイイ(はぁと」
皮肉にもこの瞬間、心を奪われたのはサキュバスであるスピカのほうだった。