オルタナ 2
□第38話
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「……取り敢えず、言い訳ぐらいは訊いてやろう。言ってみろ」
ぼきり、ぼきり……と指を鳴らす音が、2年C組の教室内にこだまする。
それに合わせるように、ごくり、ごくり……と生唾を飲む生徒達。
「いやあ、その……ね。えらくベッピンな姫様が目の前で光に包まれて……」
「ほう、それはさぞかし美しい姫だったろうな」
よかったな、高野ぉ――そう告げるサイコの目は、剃刀で切れ込みを入れたかのように鋭く光る。
「どうだ、土屋。たまには貴様の裏拳と私の蹴りの連携……というのも悪くないと思わんか?」
ニヤリ、と。
それは、サイコにしては珍しい茶目っ気だった。
しかしレイジにしてみれば、『そんなアドリブはいいから、このままお説教プリーズ!』といったところだろう。
さて、キリコはというと、
「……イイですねぇ」
と、右手首を軽く回しながら準備万端だ。『イイですねぇ』がレイジには『イイdeathねぇ』に聞こえたに違いない。
すると、先ほどまで静まり返っていた教室内が、ざわざわと期待に満ちたざわめきに支配されていくではないか。
『先生の鬼蹴りと土屋の光速裏拳……』
『ウホッ、いいコンボ……』
『知ってた? 体育の熊田さぁ、休暇取ってるだろ? あれって先生のハイキックで顎の骨が……』
『……もうさ、先生は多分サイヤ人なんだよ』
「貴様らぁ、全部聞こえているぞ」
瞬間冷却される室内。続けて。
「……それに、熊田を屠ったのは蹴りではない。ただの張り手だ」
ただの張り手で顎骨粉砕とは、本当にサイコは宇宙一の戦闘民族の末裔なのかもしれない。