オルタナ 2
□第37話
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「……なあ、スピカさん」
「なあに? あなた」
「雨、もう止んだよな」
「うん。そうだね」
「だったらさ、もうちょい離れて歩いてもいいんじゃないかな?」
「だぁめ。これはあたし達の自然なラヴのカタチなんだから」
こちらは坂道を下るヒロ一行。いつものようにスピカ。そしてまたいつものようにヒロ。
だが。
「はあ、そうですか……。ん? ミウ、どうかしたか?」
「……なんでもない、よ」
ミウだけが、違っていた。
先ほどすれ違った人形を思わせる少女。アレはやはり、そうなのだろうか? だとすれば、答えはひとつ。
「……ごめんなさい。ワタシ、忘れ物をしたみたいだ。先に帰っててくれ」
「へえ、めずらしいな。ミウが忘れ物するなんて」
ミウはまたヒロに嘘をついた。けれども、今回だけは罪悪感はなかった。
「……ワタシだってうっかりすることぐらい、あるよ」
ミウは、笑う。柔らかく、淡く。
そして歩みを止め、また少し大きくなったヒロの背を見送る。
「ごめんなさい」
呟く。
瞳を閉じ、ふう、と小さく息をついて踵を返す。
次に瞼を開けた時、自分は自分でなくなっているのだろう。
ミウはただ、それが待ち遠しかった。