オルタナ 2
□第35話
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彼らは俗にいう神族と魔族なのだが、アカリにそれが分かる筈もない。
しかしここで問題なのは、アカリが彼らを判別出来るようになってきている、ということだ。
これは、アカリよりも神族と魔族に密接な関係にあるヒロでも出来ないこと。
黒木アカリは既に人ではなくなりかけている――生前のジュンの直感が今、真実味を帯びてきた。
そして、それを実感するアカリでもあった。
(……まただ。味が……)
時折、その舌は味覚を失う。
時折、その目は色を失う。
ジュンが姿を見せなくなった頃から、“もう一人の自分”とのコンタクトが完全に途絶えた頃から、この症状に悩まされるアカリである。
それは、決まって自分の気持ちが落ち込んだ時にやって来る。
心が、ある“願い”に染まった時にやって来る。
思わず髪をかき上げ、気分を一新しようとアカリ。
しかし。
「…………ひっ、き、き……」
こみ上げる嗚咽にも似た悲鳴を圧し殺し、震える手のひらを見る。
そこには、抜け落ちた数十本もの髪の毛が指に絡まっていた。