オルタナ 2
□第33話
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「うしっ、ギリギリセーフ!」
なんとか登校時間に間に合ったレイジは、席に着くやいなや手鏡を取り出し、ヘアチェック。
「……はあ、気合い入れてセットしたのに……」
それはそれは見事な爆発っぷりだった。
「ぷっ、アンタその頭、使い古したダスキンみたいになってるわよ」
レイジの心の傷口に塩を擦り付けた後、更に酢で洗い流すようなキリコの言葉。
「うるせえっ、ダスキンはな、人の役に立ってんだ! ……雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ(中略) サウイフモノニ、ワタシハナリタイ!」
時を経て、まさかこんなシチュエーションで詩を引用されるとは、宮沢某も思ってもみなかっただろう。
実際のところ、雨ニモ風ニモ負ケテシマウのが、天然パーマの哀しきサダメである。
「でもさ、俺みたいにストレート過ぎるのも逆にセットしずらいよ」
以上、空気主人公による、空気の読めない一言だった。
レイジにとって……いや、全世界の天然パーマに悩める子羊達にとって、それは宣戦布告以外の何物でもなかった。
「ヒロぉ……てめーは今、触れちゃならねえ心のドアをピッキングした……。つまり……てめーは俺を怒らせたあっ!」
レイジの鉄拳がヒロに迫る。そしてそれは頬にめり込んで……はいなかった。
「ぶべらっ!」
なんとも奇妙な断末魔の叫びと共に吹き飛んだのはなんと、レイジの方だったのだ。
つり目の副委員長は、静かに口を開く。
「ごめん、ダスキンはもう飽きた」
雨ニモ負ケテ、風ニモ負ケテ、裏拳ニモ負ケタ。
サウイフモノニ、ナリタクハナイ。