オルタナ 1
□第9話
1ページ/8ページ
玄関を出ると、しんと闇が広がる。野良猫の目が光った。
桜乃港第三倉庫に午前零時。そこにスピカがいる。
ミウは周りに誰もいない事を確認すると、右手のリングに力を込め、変身した。
「ヒロ、確かに零時とメモには書いてあったが、少し早く着いたほうがいい。だから……」
そう言ってヒロに背を向け、しゃがみ込む。
「ん? おいおいミウ……」
「空を飛んで行こう。ヒロぐらいの体重だったら全く負担にはならないから、ほら」
ミウの翼がくいくいと動いた。少し愛嬌のあるその様子に、ヒロは笑む。
「んじゃ、よろしく」
ミウの背に身を預ける。だが、その身体はやはり小さく、日本人の平均よりも少し背の高いヒロは心配になってしまう。
「もっとしっかりつかまって……じゃあ行くぞ」
ミウの翼が大きくはためく。それに合わせるように軽くジャンプすると、二人の身体は地に降り立つ事は無かった。宙に浮いているのだ。
「わわっ、ほんとに浮いちゃってるよコレ!」
驚くヒロの身体を背中全体で感じるミウは、
「ヒロ、大きくなったね……」
と言った。