オルタナ 1
□第4話
1ページ/10ページ
今朝の敵は手強かった。相手は魔族の男だ。男はヒロがゾーンを張ったのを確認すると、ただまっすぐヒロだけに狙いを定めてきた。
ミウは体勢を崩されそうになるが、すぐに立て直し、男の攻撃を防ぐ。
だがやはり男は、ミウの事など気にも留めていない様子だ。
「なかなか……やるじゃないかっ」
男の剣を受け止め、ミウが言う。
これまで、ヒロの無事を最優先してきた為、ミウの戦闘スタイルは常に相手の先手を取るものだった。
だが、この男はそうはさせてくれない。正直、押されていた。
「俺をこれまでの相手と同じに思ってもらっちゃ困るなぁ」
男は答える。そこでやっとミウと目が合った。つまり、それまではヒロにだけ視線と殺気を放ちながら、ミウと剣を交わしていたのだ。
「……名を聞いておこうか」
「俺の名はザンだ。以後、お見知りおきを」
そこでスピカが声を上げる。
「あんたがザン? 魔剣のザンなの!?」
「ああ、お前は確かサキュバスのスピカだったよな」
ザンと名乗るこの男は、ミウと鍔迫り合いながら、まるで友人と電話で話しているかのように軽い口調で答えた。