オルタナ 1
□第20話
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私は、幸せだった。
彼と出逢えて、幸せだった。
それまでの私には、戦いの日々しか無く。
そんな私に彼は、優しさを、ぬくもりを教えてくれた。
これが愛なのだ、と気付くのに、そう時間はかからなかった。
私がこの世界に生まれ落ちた時、目の前には澄んだ瞳の少年と、銀髪の少女が立っていた。
少年は何も言わず私に手を差しのべ、ただふわりと微笑った。
それだけで、全てを悟った気がした。
私はこの少年を守らなくてはならない。
少年はこの街に、この世界にとって、かけがえの無い存在なのだ。
銀髪の少女は、私を『同族』と言った。どうやら私とこの少女は『神族』と呼ばれるモノらしい。
そして少年は『人間』という種族なのだそうだ。
人間は弱く、儚い。
1人では生きていけない。
この街に住む彼らと接する度に、そう思う。
やがて、私達の前に『魔族』と名乗る連中が現れる。
『魔族』とは、私達と対を成す存在で、影の、闇の眷族。
彼等の目的は、少年に秘められた力だった。
私達は、戦った。
いや、殺した。
殺して殺して、また殺して。
幾多の屍を積み重ねていくうち、少年は大人になっていた。
そして、唐突にそれはやって来る。
ニーチェ。