オルタナ 1

□第19話
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 じゅううう、と小気味良いフライパンの音と、卵焼きの香ばしい匂いが漂ってきたら、それが浅倉家の朝の始まり。

 キッチンにでん、と鎮座ましますは、赤毛のサキュバス、朝倉スピカ先生。
 その隣でペンと紙を手に、熱心に講義を受けるは、カタブツ生徒、天道ミウ君。

「いい? 卵焼きは簡単そうに見えて、実はとっても難しいの。固くなっちゃうのは当然ダメだし、トロトロすぎるのもダメ。外ふんわり、中トロリ、これが極意なの」

 はい、メモるように、とスピカ。

「ふむ、ふわトロ……と」

 そんな2人をリビングから眺めるミオだが、手にした携帯電話のメモにはしっかり『卵焼きはふわトロ』と記されていた。

「はい、じゃあミウちゃんもやってみて。口で説明するよりまずは実践よ!」

 いつの間にか、今朝の弁当作りにミウも参加する形となったが、それは彼女も望むところだろう。

 ミウの数少ない趣味に編み上げブーツ収集があるのだが、最近はその中に料理も入ってきている。
 まぁそれもスピカのプロ級の腕前と、出された料理をキレイにたいらげるヒロを目の当たりにしてからなのだが。

 これもスピカ曰く『恋するオトメ心』か。
 砂糖と塩を間違えるベタな展開も、『恋は盲目』でご愛嬌。
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