オルタナ 1
□第18話
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静かな昼休み。
来栖ジュンは、いつもの様に体育館裏の自販機の前にいた。
少し違うのは、それがある人物の呼び出しを受けて、という事だ。
自販機の上段右端を見る。幸い、北海道カフェオレは売り切れていない。
ジュンはクスッと笑みを漏らし、240円を投入。ボタンを2回押す。
それと時を同じくして、背後から自分の名を呼ぶ淡い声がした。
「来栖……先輩」
陽に照らされた黒髪が艶めく。
今日この機会を設けたのは、黒木アカリの方からだった。
「やぁ、待ってたよ。キミから呼び出しなんて光栄だなぁ。
今日はコレも売り切れじゃなかったし、良い日になりそうだよ」
そう言ってアカリにカフェオレを渡す。
「……ありがとうございます」
以前レイジから受け取った時のそれとはまるで違う心境。
早くもアカリの胸に、再びジュンと会ってしまった事への後悔が募る。
それはまるで静かに、だが確かに積もる雪の様で。
その色は鈍色。ただ黒く、重く。
今すぐここから逃げ出したい衝動にかられる。
しかし、アカリにとって、逃げ場など無いのだ。
それが彼女を取り巻く現状、現実。そして、真実。