オルタナ 1
□第14話
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「よっし、じゃあいいかみんな。開けるぞ」
しん、とした廊下にレイジの声が響く。
特別教室とは名ばかりの、陽も当たらない物置小屋と化したそこに、ヒロ達は来た。
職員室からキリコがくすねてきたカギを差し込むレイジ。
カチ、と無機質な音を立て、ドアが開く。
ヒロ達の鼻に飛び込んで来るすえた臭い。
換気など、殆んどされていないのだろう。澱んだ空気が、ヒロの体にまとわりつく。
それは、この間の不死者の放つ霧に少し似ていた。
「うひー、ちょっと窓開けようぜ。ヒロ、お前そっちな」
男二人で全ての窓を開ける。
澄んだ風が教室内を駆け抜けた。
「……で? どこにいんのよ、その人喰い鬼とやらは」
キリコの視界に入るものは、使い古された教材や、机ばかり。
「おいおい、何だよキリコ。お前実は一番ノリノリなんじゃねぇの?」
「べ、べつにアタシは人喰い鬼だなんて信じてないわよ、バカレイジ!」
毎度のやりとりに苦笑するヒロ。
だが、ミウとスピカの様子に、ただならぬ雰囲気を感じとる。
また空気が澱んでいく気がした。