オルタナ 1

□第14話
1ページ/8ページ


「よっし、じゃあいいかみんな。開けるぞ」

 しん、とした廊下にレイジの声が響く。

 特別教室とは名ばかりの、陽も当たらない物置小屋と化したそこに、ヒロ達は来た。

 職員室からキリコがくすねてきたカギを差し込むレイジ。
 カチ、と無機質な音を立て、ドアが開く。

 ヒロ達の鼻に飛び込んで来るすえた臭い。
 換気など、殆んどされていないのだろう。澱んだ空気が、ヒロの体にまとわりつく。
 それは、この間の不死者の放つ霧に少し似ていた。

「うひー、ちょっと窓開けようぜ。ヒロ、お前そっちな」

 男二人で全ての窓を開ける。
 澄んだ風が教室内を駆け抜けた。

「……で? どこにいんのよ、その人喰い鬼とやらは」

 キリコの視界に入るものは、使い古された教材や、机ばかり。

「おいおい、何だよキリコ。お前実は一番ノリノリなんじゃねぇの?」

「べ、べつにアタシは人喰い鬼だなんて信じてないわよ、バカレイジ!」

 毎度のやりとりに苦笑するヒロ。

 だが、ミウとスピカの様子に、ただならぬ雰囲気を感じとる。
 また空気が澱んでいく気がした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ