オルタナ 1
□第11話
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携帯電話から『みっみっみらくる──』と一度聴いたら耳にこびりつきそうなメロディが流れる。
彼はそれを叩きつけるようにひっ掴み、アラームを止めるとまた目を閉じる。
この一連の動作をあと三回繰り返すと、高野レイジの朝は始まる。
だが、彼の目を本当に覚まさせるのは『みっみっみらくる──』ではなく、鏡に映った自分の爆発頭だ。
「……はあぁ」
レイジは極度のくせっ毛である。いや、“くせ”なんてレベルの問題ではなく、天然パーマと言ったほうがいいだろう。
行きつけの美容室で購入した彼曰く『恋のマジックポーション』を髪に馴染ませ、ドライヤーで整える。
この一連の作業をあと三回繰り返すと、真の意味で高野レイジの朝は始まる。
現在八時二十五分。家から学園までは約三十分。朝のHRは八時三十五分からなので、今朝も遅刻確定である。
だが彼は菓子パンをくわえながら、トランクス一丁で『みっみっみらくる──』とゴキゲンだ。
そう、今日はそういう日なのだ。