オルタナ 3
□第72話
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「誰から……ですって? そんなもの、決まってますわ。お姉様を殺すのは他の誰でもない、このわたくしですわ──」
よ。
言うと同時に、エリーザベトはニーチェの間合いに踏み込んでいた。その容姿からは想像し難い“右フック”というプレゼントを最愛の姉に贈る。
姉はというと、それをしっかりと左手に受け止め、掌から伝わる妹の愛情をひしと感じ、
「お前、人間じゃないな?」
吐き捨てた。
「……ふふ、お姉様ほど“中途半端”じゃありませんけど?」
返すエリーザベト。空いた左手を仰々しく広げると、しゃきん──冷たい金属音を伴って、爪がナイフのように伸びた。
「さあお姉様、踊りなさいな」
氷の笑みを貼り付かせ、エリーザベトの刺突がニーチェを見舞う。全てが急所を的確に狙ったそれらは、獲物の神経すら削ぎ取っていくような死神の連撃。
「さあさあさあお姉様! もっと華麗なステップで!」
「──ちっ」
その一つ一つをギリギリでかわすニーチェは後退し、一旦間合いを外す。
が、そのバックステップした踵が着地する頃、ニーチェの眼前には既にあどけないエリーザベトの顔と、五本の鋭刃の先端が迫っていた。