オルタナ 3
□第65話
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もう何度繰り返した事だろうか。何度罵声を浴びせかけられた事だろうか。彼女らの折れかかった心はそれでも尚、疲労と屈辱に震える唇を開かせようとする。
そしてまた罵声。
しかし彼女らは止めようとはしない。延々と繰り返される拷問──彼の打ち下ろす言葉の鞭が、正直なところどこか心地良く感じてしまう程だ。ランナーズハイのようなものだと言えよう。
「さあ、もう一度だ! もう一度言ってみろ!」
『お……おかえりなさいませ、ご主人様!』
「駄目だ駄目だダメダメだ! そんなもので……ああ!? そんな挨拶で主の心を癒せるとでも思っているのかこのメス豚共があっ!」
二年C組委員長もとい、メイド喫茶『キュアっとふぉ〜むcafe』総支配人・高野レイジは尚も吼える。
「いいか、貴様らのケツ穴みてえなみすぼらしい耳の穴をかっぽじってよぉく聞けメス豚共! 貴様らの口先だけの『おかえりなさいませ』なんざもう某局の受信料の集金くらいにウンザリなんだ! そんなもんは蝿の小便以下の蛆虫のゲップだ! そんな口先だけで臭いゲップ吐いてる暇があったら、ママの汚ねえ乳首の先程でもメイドの心を理解してみやがれってんだこの便所虫共!!」
『サー! イエッサー!』
これでは最早、軍隊における新兵の訓練キャンプである。
そんな狂気じみた状況におかれても、彼女らはまた『おかえりなさいませ、ご主人様』を復唱するのだった。