オルタナ 3

□第63話
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 今日も今日とて放課後の軽音部を占領する桜乃エクスプロージョンの面々。
 部室特有の埃っぽさは既に失われ、代わりに充満するのは差し入れの菓子の甘くかぐわしい香りだ。
 ヒロなどは、フーコの持参した『柿チョコ』にどっぷり嵌ってしまった口である。

 この柿チョコなる珍味は、柿の種というポピュラーな米菓にチョコレートをコーティングした一品なのだが、初めて口にする者は皆、僅かな抵抗感を覚える事だろう。
 口に含めば、まず挨拶代わりに広がるまろやかなココアバターとカカオマス。
 噛み砕けば、しかる後にひょっこり顔を覗かせ主張する、これでもかという程の“和”。
 この二つの決して出会ってはならない組み合わせが、ヒロの舌をこちょこちょと刺激する。

 とはいえこの柿チョコは、諸手を挙げて『う、Umeeeee!』と賛辞を贈る程の代物でもない。
 けれども、気が付けばもう一つ。よしよしあと一つ。いやいやもう一つ……と、こんな具合でヒロのベースの指板は、ほんのりカカオが香るポリフェノール仕様になってしまった。これぞまさにチョコボール浅倉である。

 ──などと、柿チョコと名男優について熱弁している場合ではない。
 なんと、桜乃エクスプロージョンには、本番まであと七日しか残されていなかったのだ!
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