オルタナ 3
□第62話
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また始まってしまった。今回は土屋姉妹だけでなく、タケゾーも加わっての壮絶なバトルロイヤルだ。
きっかけはまたフーコから。よせばいいのにこのサル頭は、姉の事になるとついつい余計な一言を口走ってしまう。
キリコが鼻息荒くリクエストした夜乙女だが、男女の声域の違いと、何よりこのバンドには合わないだろうという話になっていた。
それにはキリコも納得し、残念(?)ながら夜乙女カバーはお流れと。
そこで、だ。
「……まあランキング22位だし、やっても誰も気付かないよね」
このサル頭がぼそりと呟いた一言が、キリコの裏拳トリガーとなってしまったのだ。
「なん……ですって? フー……コ」
キリコの歯軋りする音が、バリバリと部室内に響き渡る。
ヒロには、その音が姉妹間で飛び交う火花の音にしか聞こえなかった。……相も変わらずべんべんとベースを鳴らしながら。
「アンタねえ! ランキング22位になる事がどれだけ大変な事か分かってんの!?」
恐らく、キリコも詳しいところは分かっていない。
「そんなのあたしには分かんないよ。でもね、これだけは言える。ランキングの10位以下なんて、一般リスナーにとっちゃどうでもいいんだよ。
つまり! 夜乙女は! 我々一般リスナーに認知されずに! このまま消える!」
キリコを指差し、『ドーン!』と某せぇるすまんのように。
しかし、リッキーマニアが“一般リスナー”を自称するのは如何なものか。