オルタナ 2
□第49話
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「え……?」
ミウの言葉に、その響きに、ヒロは動揺を隠せない。
何か、いる──たったそれだけの言葉に。
「何かって……」
「ワタシ達と同類の何か、だ。そいつは明らかにワタシ達へ敵意を向けている」
思えば、近頃は以前と比べ、とみに平和になったものだ。
ヒロは忘れていた。自分はやはり、他の同年代の少年少女達とは違うのだという事を。
浮かれていた、とも言うべきか。こうして親しい友人に囲まれ、休日の穏やかで楽しいひとときを過ごす。そんな当たり前の日常も、以前はどれだけ渇望した事か。
「──いや、ワタシ達……ではないな。ヒロに、ヒロだけに敵意を向けている」
ヒロは、忘れていた。
「そう……か」
急速に、辺りの喧騒が遠退いていく気がして、ほうと溜め息を漏らす。
女性客の悲鳴に似た笑い声。
波打つプールの水しぶき。
夏の陽射しと空の青、入道雲。そして、友人達。
それら全ては、ヒロにとって非日常だ。
では、この浅倉ヒロが立つべき日常とはつまり。
「──で、そいつはどこにいるんだ?」
血塗られた、戦場だ。