オルタナ 2

□第49話
1ページ/10ページ


「え……?」

 ミウの言葉に、その響きに、ヒロは動揺を隠せない。
 何か、いる──たったそれだけの言葉に。

「何かって……」

「ワタシ達と同類の何か、だ。そいつは明らかにワタシ達へ敵意を向けている」

 思えば、近頃は以前と比べ、とみに平和になったものだ。
 ヒロは忘れていた。自分はやはり、他の同年代の少年少女達とは違うのだという事を。
 浮かれていた、とも言うべきか。こうして親しい友人に囲まれ、休日の穏やかで楽しいひとときを過ごす。そんな当たり前の日常も、以前はどれだけ渇望した事か。

「──いや、ワタシ達……ではないな。ヒロに、ヒロだけに敵意を向けている」

 ヒロは、忘れていた。

「そう……か」

 急速に、辺りの喧騒が遠退いていく気がして、ほうと溜め息を漏らす。

 女性客の悲鳴に似た笑い声。
 波打つプールの水しぶき。
 夏の陽射しと空の青、入道雲。そして、友人達。

 それら全ては、ヒロにとって非日常だ。
 では、この浅倉ヒロが立つべき日常とはつまり。

「──で、そいつはどこにいるんだ?」

 血塗られた、戦場だ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ