オルタナ 2
□第48話
1ページ/11ページ
待ちに待った日曜がやって来た。今日ばかりは、じりじりと照りつける太陽もどこか愛らしく見えてしまう。
そんなヒロは奥方達を従え、ここ桜乃駅前でレイジやキリコらを待っている。待ち合わせ時間の午後1時はもうすぐだ。
「まあ、それでもやっぱり……あちーな」
「じゃあ飲み物買ってこようか?」
ミウはそう言って駆けて行った。しかしミウが向かった先は、駅構内とは正反対の方角。つまりは繁華街の喧騒の中。
「なんだ? 自販機なら駅にあるってのに……」
「ねえヒロ君、ミウちゃんが走って行った方向ってもしかして……」
その“方向”とやらを恐る恐る指差すスピカ。
果たして、震える指先が指し示すものとは。
「あ、ああ……」
駅前すぐにあるお馴染みの甘味処の店先に、これまた見慣れた銀髪が陽光を受け、艶やかな輝きを放っている。それは彼女の今の心境をそのまま表しているかのようだ。
しかし、それを眺めるヒロ達は。
「たまや……だよね?」
複雑な面持ちだった。
まるで太陽の申し子のようなアカネでさえも、その表情は生憎の空模様。
そんなヒロ達の想いは露知らず、銀髪の主は紙袋を抱え、小走りに戻って来るのだった。
では何故、ヒロの表情は優れないのか? たまやと言えば、桜乃市民なら誰もが知っている人気店である。
さて、その答えやいかに?
「はいヒロ、買ってきたよ!」
「あ、ありがとう……。して、これは?」
「タピオカ抹茶クリームレモンティー!」
正解は、店長の超絶血迷いメニューと、ソレを選んでしまうミウの天元突破センスにあったのだ。