オルタナ 2
□第44話
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都会──そう呼べるであろう桜乃市なのだが、ヒロ達が暮らすこの花見町は、町全体がどこかのどかな空気を纏っている。
そんなこの町においてもやはり、高級住宅地というものは存在する訳で。
桜乃市花見町2─1─5。そこにあるポリスボックスを境として一歩北に登ってみよう。さすれば清楚な婦人が仔犬を連れて、洒落たカフェで過ごす優雅な午後を垣間見る事が出来るだろう。
では南ならどうか。丁度少年が二人、駄菓子屋から出てきたところだ。
彼らはチョコレートがコーティングされた棒状のスナック菓子“チョコい棒”を口にくわえ、携帯ゲーム機の対戦に夢中である。これが彼らの野球であり、サッカーなのだろう。
そんな少年達とすれ違った相馬ユキトは、そのまま真っ直ぐに北へ。ポリスボックスも通り過ぎて、更に歩を進める。
やがてユキトが辿り着いたのは、閑静な住宅地にあって、ことさらその存在を誇示するかのようにそびえ立つ25階建ての高層マンションだ。
ユキトはその10階、南側の角部屋まで進むと、それがさも当然であるかのようにシャツの胸ポケットからキーを取り出し、ドアの鍵穴に差し込んだ。
そう、ここはユキトの部屋なのだ。