オルタナ 2
□第39話
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「……ベルゼバブ」
「そう、蝿の女王さ。恐ろしく強え魔族だよ。どうやら、アンタに興味があるようだけど?」
くっくっく、と圧し殺した笑いを漏らすザン。
「……興味ない」
との返答に堪えきれなくなったのか、ザンの顔面が一気に爆ぜた。
「ぶっ、はっはっは! ……おい、聞こえてんだろ蝿の姐さん。ここにおわす新井野チエ様は、アンタに興味ないんだとさ!」
未だ金縛りの解けない蝿に向かって、捲し立てる。
そして、チエはというと。
「だってわたし、蝿嫌いだもの」
目と鼻の先にある、どうやら偵察機の役割を果たしているらしいそれに、ぽつりと。
ザンが再び大笑いしたのは言うまでもない。
「ぶわっはっは! ……ああ、腹いてえ。ベルゼバブの姐さんよ、まあそういうこった。俺達に用事があんのか知らねえけどよ……」
魔剣を構え直し、縦に一閃。
「こっちはアンタに用は……いや、眼中にねえんだわ」
黒き刃は蝿に届きはしなかったが、その刀身からほとばしる魔力と風圧だけで蝿は跡形も無く消し飛んでしまった。