オルタナ 2
□第38話
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夢を見ていた。
それは、美しくも悲しい夢だった。
黒と紫、そしてうっすらと銀を混ぜたような深い色の夜空の下、目の前には麗しき姫君が立っている。
一目で理解した。自分は、この姫を愛している。
そして、それは姫も同じく。
「姫、私は貴女を――」
「どうかその続きは言わないで。わたくしも想いは同じ。でも、もうわたくしには……」
伏し目がちに告げる姫のつま先が光に包まれ、少しずつ、消えていく。
「そんな……ああ、姫……」
「どうか嘆かないで。わたくしは消えてしまっても、心はいつも貴方の中に……」
姫の身体は光の粒子となって、深い夜空の星の銀に溶けてゆく。
口づけることも、抱きしめることさえ叶わずに、笑顔だけを残して姫は消えた。
――姫、私は忘れません。貴女を、貴女の微笑みを。そして……貴女を愛したことを。姫……姫……。
「ひめえぇぇへえぇぇえへっ!」
以上、高野レイジによる美しくも悲しい恋物語は、鏡に映る自身のボンバヘッ! により終幕を迎えることとなった。
「あれ? おかしいな。涙でぼやけて頭が三倍くらいに膨れあがって見えるよ……ははは……」
現実逃避できる程、今のレイジに残された時間は多くはない。それに気付くのは、もう少し先になりそうだが。