オルタナ 2
□第36話
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月曜の放課後。いかにも梅雨らしく、突然降りだした雨に下駄箱前で立ち往生するアカリだった。
曇り、時々雨。降水確率ニ十パーセント――以上が、今朝の天気予報である。美人お天気キャスターの曖昧な笑みが脳裏に浮かび、傘を持って来ていないアカリは小さくため息をついた。
このまま雨が止むまでこうしていようか、それとも一気にダッシュで帰宅するか――そう考えたが、“時々雨、降水確率ニ十パーセント”と謳う割に天の恵みは慈悲深く、乾いた大地を潤していく。
これで選択肢は一つだけとなった。だが、じっとこうしているのも手持ちぶさたではある。
保健室にでも行こうかと足を向けたが、思いとどまった。マルちゃんの愛らしい顔を見ると、どうしても“彼”のことを考えてしまいそうだからだ。
その為、あれ以来アカリが保健室を訪れる機会はめっきり減ってしまっている。
そうしてまた溜め息を漏らす。──が、それが壁の灰色に溶け込むより早く、もやりとしたアカリの思考に一筋の光明がさした。
(……そうだ、音楽室でピアノでも弾いてよう)
優等生のアカリなら、音楽教師もすんなりと鍵を貸してくれるだろう。
アカリは勢いよく反転し、足早に職員室へ。一拍遅れて黒髪がなびいた。