オルタナ 2
□第32話
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岡崎サトシは悩んでいた。
あれ以来、どうしても頭に思い浮かべてしまうことがあるのだ。
いや、気付いてしまった、と言った方が正しいだろう。
亜麻色に輝くポニーテール。
均整のとれた、けれども丸みは失わないボディライン。
鋭い眼(まなこ)のすぐ下に、絶妙なバランスで配置された泣きぼくろ。
ぽってりと艶めく唇。
そんな木村サイコが、自分と対峙した時にだけ見せる顔。
恋する乙女の恥じらいは頬を朱に染め上げ、その瞳は戸惑いと期待に潤み、唇からは切な気に吐息が漏れる。
今更ながら、サトシは気付いてしまったのだ。
ひょっとして、木村サイコは自分に気があるのではないか、と。
まさしく今更ながら、である。その鈍さはヒロとレイジにもひけを取らないだろう。
だが、サトシは前述のニ人とは決定的に違った。
そう、くどいようだが、サトシはサイコの想いに気付いた。それだけで、ヒロとレイジよりも男として一枚上手と言えるだろう。
しかしながらこの岡崎サトシ、二十八歳。彼は見た目から人に与えるイメージ通りに、色恋沙汰に対してあまりに奥手と言えた。