オルタナ 1
□第7話
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教室に戻る処でチャイムの音。廊下で授業を終えた教師とすれ違う。何か言いたげだったが、ミウと目が合うと、また口をつぐんだ。
「よぉヒロ、ミウとラヴラヴサボリかよ」
レイジが呑気に声をかけるが、ヒロは答えない。
「……スピカ、見つからないのか?」
それでもヒロは答えず、席に着いてしまった。
ミウはレイジにすまない、と一言告げた。
ミウには分かっている。ヒロは心底怒っている、と。
昔からそうだ。ヒロは普段から空気……もとい口数が少ないが、本当にキレている時は何も話さなくなってしまう。
目を閉じると、ミウに遠い記憶が蘇る。そう、あれは夏の日。
『とうさん、どっかいっちゃうの?』
『ごめんな、ヒロ。でもこれが終わったら──』
『とうさんのうそつき! どうして……やくそくしたのに……』
──ヒロ、あまりコウを困らせちゃいけない。
『しらない! もう、とうさんもミウねーちゃんもしらない! どっかいっちゃえばいいんだ!』
──ヒロ……。
目をゆっくり開ける。ミウは少し眠っていた事に気付く。
4時限目の授業も終わろうとしていた。