オルタナ 3
□第69話
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「……はあ」
溜め息ばかり出る。
──いや、正確に言えば、溜め息しか出ない。昼食のオムライスを作る手も止まりがちだ。これではミウに代わった方がまだましではなかろうか。
「ほらっ、焦げてるじゃないか!」
「──えっ!? ……ああ、ごめん」
見事に日頃とは立場が逆転している。それ程までに、スピカは落ち込んでいた。
おそらく、今日なのだろう──そう、スピカは思う。いつもなら、こんな機会があればヒロは必ず自分とミウを誘っていたのだ。
しかし、今日は違った。
ヒロは、「行ってくる」とだけ残して、出て行ってしまった。
それが、悲しかった。あたしも行く、と言えない自分に腹が立つ。
その一方で、しょうがない、と思う自分もいて、何だかやっぱり悲しかった。
「……ミウちゃんは平気なの?」
「…………」
ミウからの返答は、無かった。
フライパンの上でケチャップライスが焦げる。それをじっと見下ろす二人。言葉も無く。
やがて、ミウがガスを止めた。
スピカは久しぶりに見た。ミウが下唇を噛んでいるのを。その口元が、わなわなと震えているのを。
──瞬間。
その口元が、ミウの薄い唇が、まるで無理矢理にでもこじ開けられたかのように、ぎこちなく大口を開いた。ひくっ、と素っ頓狂な声を付け足して。
「どう……したの?」
「ひっ──ひっ──」
引きつけを起こしたかのようなミウの奇声。スピカの背中に、怖気が走る。
やがて、その怖気は──
「ミ……ウちゃん、これって……!」
「ひっ……ひっ……………………く、くふ、くふふ」
──確信に、変わる。