オルタナ 3
□第69話
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「……あのさ、今日は休みだよな?」
「ええ」
「部活とか、やってないよな?」
「ええ」
「……じゃあ何で制服姿なわけ?」
「着慣れてるから」
「そう……なんだ」
「ええ、そうよ」
「…………」
ザンの頭の中では、三点リーダーがまるで大蛇のようにとぐろを巻いて連なっていた。
ここは、チエの部屋。八畳程のワンルームマンション。
室内にティーンエイジを感じさせるものは皆無である。そればかりか、テレビすらも無い。ここにあるのは小型の冷蔵庫とシングルベッドだけ。
時折、冷蔵庫から聞こえるモーター音と、掛け布団の皺癖──それらから放たれる僅かな生活臭が、他に何も無いこの部屋においてはむしろ異端であると言えよう。
「──ま、いっか。ほら、差し入れ」
ザンはそう言ってチエにコンビニの袋を渡した。中にはスナックやチョコレートなどの菓子類と、最近発売されたペットボトルの北海道カフェオレが入っている。
「ありがとう。……あ」
どうやらチエも気付いた様子だ。
「北海道ミルクたっぷりカフェオレ……五百ミリリットル……」
「製造元は大阪だけど、な」
右の眉を吊り上げ、おどけてみせて。
それにチエがくしゃりとはにかむと、今度は大袈裟に肩をすくめるザンだった。