オルタナ 3

□第69話
3ページ/14ページ

 
 
 
「……あのさ、今日は休みだよな?」

「ええ」

「部活とか、やってないよな?」

「ええ」

「……じゃあ何で制服姿なわけ?」

「着慣れてるから」

「そう……なんだ」

「ええ、そうよ」

「…………」

 ザンの頭の中では、三点リーダーがまるで大蛇のようにとぐろを巻いて連なっていた。

 ここは、チエの部屋。八畳程のワンルームマンション。
 室内にティーンエイジを感じさせるものは皆無である。そればかりか、テレビすらも無い。ここにあるのは小型の冷蔵庫とシングルベッドだけ。
 時折、冷蔵庫から聞こえるモーター音と、掛け布団の皺癖──それらから放たれる僅かな生活臭が、他に何も無いこの部屋においてはむしろ異端であると言えよう。

「──ま、いっか。ほら、差し入れ」

 ザンはそう言ってチエにコンビニの袋を渡した。中にはスナックやチョコレートなどの菓子類と、最近発売されたペットボトルの北海道カフェオレが入っている。

「ありがとう。……あ」

 どうやらチエも気付いた様子だ。

「北海道ミルクたっぷりカフェオレ……五百ミリリットル……」

「製造元は大阪だけど、な」

 右の眉を吊り上げ、おどけてみせて。
 それにチエがくしゃりとはにかむと、今度は大袈裟に肩をすくめるザンだった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ