オルタナ 3
□第68話
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「お……おい、これじゃ捌ききれないぞ! どうすんだよ!」
「フフ……甘いぜ、ヒロ。まだまだ宴はこれからだ」
半ばフーリガンと化した客に揉みくちゃにされながら、レイジはそれでも余裕綽々だ。全身から完全に脱力し、押し寄せる人の波を、まるで渓流に浮かんだ木の葉のようにすいすいといなす。その様がヒロの目には、映画でよく見る中国武術の達人のように映った。
やがて高野老師は、一人の新米メイドの元へ辿り着く。
「おチビちゃん、さっき言った通りに頼むぜ」
「おまかせくださいまし。わたくし……やる時はやりますわよ」
そう言ってエリーザベトはキッチンに向かい、ケーキセットを受け取ってテーブルへ。
──だが。
「お待たせいたしま──っ!?」
テーブルの前で、見事につるんとすっ転んでしまったではないか。
「ふえ〜ん、ごめんなさぁい……」
ぶかぶかのメイド服の胸元と、唇から左の頬にかけて、生クリームがべとりと付着している。これだけでも、とある属性を持つ諸兄にはたまらないものがあるのだろうが、エリーザベトは更にだめ押しを用意していた。
『だ……大丈夫かい?』
胸の奥に宿った“ナニか”を必死に抑えつけながら、男性客はエリーザベトを気にかける。
その時だ。