オルタナ 3
□第65話
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そうして幾度となく『おかえりなさいませ』と『蛆虫共!』を繰り返すうち、遂に。
『おかえりなさいませ、ご主人様!』
「……もう一度、言ってみろ」
『サー! イエッサー!』
見習いメイド達は、その視線の先に各々の主を見いだし、主の無事の帰宅に喜び勇む心を抑えるように一旦俯いた。
しかる後、極めて冷静に、しかしながら五月の午後の陽射しを思わせる柔らかな笑みを口元に浮かべて。
『おかえりなさいませ、ご主人様』
これには、さすがの鬼軍曹も感動を禁じ得なかった。
つい先程まで蛆虫以下だった彼女らは、とうとうその領域に登りつめたのだ。
徹底した、奉仕。
それでいて、決して押し付けがましい事はない。それはつまり、溢れんばかりの慈愛の心だった。
「……フン、上出来だ! パパとのファックを許可する!」
『サー! サンキュー、サー!』
上機嫌の高野軍曹だが、視界の片隅に廊下側の窓を確認すると、そこまでつかつかと歩み寄り、窓枠を人差し指の腹でなぞった。
「……糞蝿共、これは何だ?」
『サー! 埃であります、サー!』
「そうだ、埃だ。ならば貴様らフンコロガシの出番だ! 教室内をツルツルのピカピカにしろ! キリストですら、聖母マリアとファックしたくなるくらいにな!」
『サー! イエッサー!』
高野軍曹はすかさず男子にも罵声を浴びせかける。