短編と設定集

□キリリク短編
5ページ/8ページ


「……ありがとう。僕が喉渇いてるって、よく分かったな」

「見てたからね」

 即答だった。更にヒロは続ける。

「アンタと同じさ。アンタが俺を監視してるように、俺もアンタを監視してる」

「悪趣味だな……とは言えないか」

 言って、ユキトはため息をつきながらジュースにストローを突き刺す。それとほぼ同時だった。

「でもさ、アンタのは……監視じゃないよな?」

「……なに?」

「アンタのは監視じゃない。アンタは俺を――」

 見てるだけだ。

「……おかしなことを。ただ見てるだけとはどういう――」

「言わせたいのか? いや……俺に言ってほしいのか?」

 ユキトはジュースを一口飲んで、いや、いい……と。ヒロの圧し殺したような笑い声が聞こえる。

 ヒロの言っていることは、全て。

「図星……だよな? センパイ」

「……失礼する。キミがこんなに下らない人間だとは思わなかった」

 そう言うしかなかった。逃げる、しか。

 刹那。

「逃がさない」

 背後から、強く抱きとめられた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ