短編と設定集
□キリリク短編
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校舎裏に戻ってみると、先ほどより幾分か陰が射している。これなら作業もスムーズに進むだろう。
喉の渇きは続いているが、それももうすぐだ――そう、思った。
「センパイ」
ふいに、背後から声をかけられる。
声の主は……振り向くまでもなかった。
「浅倉ヒロ君……か」
ずっと、自分が監視している人物なのだから。
浅倉ヒロ、17歳。
ゾーンと呼ばれる力を操る、打倒ニーチェにおいて大きな鍵を握る少年。
間違える筈も、ない。
「いつも大変だな、センパイ」
「……そうでもないさ。もう馴れたよ」
引き始めたはずの汗が、またじわりと浮かんでくるのを感じた。
その矢先、首筋から背中にかけて雫が落ちていくのがはっきりと分かった。
なに、太陽のせいだ――そう思い、ずれてもいない眼鏡を上げる。
「ほら、喉渇いてるだろ?」
そう言って、背中越しにパックのオレンジジュースを手渡される。右頬にほんのり冷気が当たって、心地よかった。