短編と設定集
□キリリク短編
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「ただいまぁ」
リビングに向かうと――ああ、いたよ。いましたよ。ワタクシにこの忌々しい名前を付けた張本人が。
「あ、シオリ、おかえりぃ」
そう、そう、そうなのだ。俺の名前は藤崎シオリ。
この名を聞いてピンときたヤツなら、俺の苦しみが分かるだろ?
ピンとこなかったヤツ。そこのアナタ。『藤崎詩織』で検索してみ。
好きとか嫌いとか、最初に言い出したのは誰なのかしらねえ、まったく。
はたして俺のメモリアルは駆け抜けてゆくのかな?
「オカンよ、もう毎日訊いてる事だけどさ、今一度、貴女に問う。
なんで男の俺に、シオリなんてときめきな名前付けたんだ?」
「う〜ん……なんとなく、かな? よく覚えてないんだわ。たぶん適当」
だったら、タロウとかイチローとかでもいいじゃないかオカンよ。
言っとくけどな、この桜乃市に伝説の樹なんてねえぞオカンよ。
あの聖帝・サイコ先生ですら、俺の名前を呼ぶ時は半笑いなんだぞ。
あれ? サイコ先生って……ひょっとして、メモラー?