オルタナ 1
□第28話
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ヒロの心は落ち着き払っていた。
目の前で、次々とミウやスピカに倒されていく生徒達を見ても尚。
以前に同じく不死者に操られた連中を目の当たりにした時は、こうはいかなかった。
校門前でミウに諭されたからだろうか。
それもあるだろう。だが、それだけではないのだ。
そう、“それだけではない”。
学園内へ踏み込んだ時にヒロが抱いた疑問――それは今再び、辺りをうっすらと漂う霧に触れ、確信へと変わる。
(これは……やっぱり……)
そして、霧に触れるうちに、ある感情がヒロに伝わって。
否。それは感情と言うよりも。
(……願い? 不死者は俺に会いたがっている? そして……)
「ヒロ、大丈夫?」
不意に声をかけられ、ヒロの意識が現実に戻される。
目前には、くすんだ霧の灰色を纏わせても尚、美しく流れる銀のショートカットと、見るもの全てを焼き尽くすかの様な灼眼のサファイアレッド。
隣にもう1人、その灼熱の髪は毛先を遊ばせ、正に揺らめく焔の様である。そして、見る者の思考を鈍らせる妖艶さと、瑞々しさを兼ね備えた柔らかいボディライン。
「ああ、大丈夫だよ。ミウとスピカも怪我は無いか?」